No. 16 インドネシアの津波  その一 

では、私たちが津波から救われたことだけを話すよ。 といっても、津波に飲まれたけど助かったていうことではないから、あまり期待しなさんな。 

これは、結構長くなる投稿なので、何回かにわけて載せることにする。 いつもの通り、夜書いて、アップロードして、翌日、誤字、脱字、とくに「てにをは」や「、」の位置など直しながら、文も直す、ということをしているので、このシリーズは全部の投稿を終えたあとに、再度見直しして、書き直すということになるでしょうね。 自分では、Henry Millerみたいだぜ、なんて勝手に思っている。

Henry Millerは北回帰線、南回帰線などの作者で、大学を中退したけど、仕事を転々とし、女性遍歴を重ね、ヨーロッパ、アメリカを遍歴しながら書いた、という作家。 彼の文を読むと、結構文法などの間違いが多いが、それを忘れさせるほどの勢いが文に流れていて、ひきこまれる。 その文法の間違いが多いけど、出版してしまう、という点だけが、私のやりかたに似ている、と勝手にHenry Millerをここで持ち上げただけだよん。 私の文など、足元にも及ばない。)

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私たち家族は2002年の9月から2004年の9月までシンガポールにいた。 結婚8年目で、双子が2歳と10ヶ月のとき。 犬と猫も連れて、30時間かけて、フロリダからシンガポールに行った。 旦那の仕事で赴任ってことだ。 政府の職員だから、日本で言うお役人。 でも、外交官ではないよ。 日本語でいうと、運輸省の検査官。 シンガポールの事務所から中国、韓国、香港、タイ、モンゴル、インドネシアなどに出張して、現地でアメリカ籍の飛行機の修理を委託する現地修理工場を監査するのが仕事である。 

お役人といっても、アメリカでは別に普通の仕事。 本当に優秀な人間はこんな政府の組織なんかにいないで、プライベートセクターつまり、一般企業にいちゃうんだよー、って旦那が教えてくれた。 なので、旦那は日本人が思いがちな「エリート官僚」ではない。 子供たちの前で、「おい!静かにしろ!聞け!」と静かにさせて、おならを「プー」とするようなやつである。 だけど、中国、韓国なんて儒教色の強いお国では、「アメリカ政府の役人」は特別な存在だ。 更に、検査官の監査の結果で認定書が更新されるか、取り上げられるかが決まる。 認定書が下りなければ、修理させてもらえないから、何百万円という収入が見込めなくなる。 だから、現地の修理工場の旦那のような検査官への取り扱いはVIP扱いになる。 ただ、アメリカ国家公務員はUS$25以上の贈答物はもらってはいけない法律になっている。  判断を誤ると、賄賂を受け取ってしまいがちな環境ある。 下手したら、監査を甘くする、という危険がある。 これは、究極的には、飛行機の乗客の命にかかわることでもある。

また、アジア一般の航空業界はまだ発展途上の国があり、アメリカの規格、基準に追いつかないところがある。 (香港、韓国、シンガポールはかなりしっかりしている。) なので、監査だけでなく、指導していくことも仕事である。 検査官の中には、文化の違いを無視して、現地の人たちの能力の低さをけなす人がいる。 差別的な言葉を吐くやから、おれっちらアメリカはおまえらより進んでいるんだぞ!という態度をとる連中なんて沢山いるのだ。 いわゆる、「醜いアメリカ人」である。 これは、シンガポールオフィスだけの話ではない。 マイアミのオフィスでもそうだった。 自宅謹慎を命じられた検査官も個人的に知っている。

検査官のほとんどがミリタリーのパイロット上がり、小さな飛行機のパイロットをしていた人、航空会社の元パイロットである。 パイロットにもいろいろあるが、概して、個性が強く、自分の正義を通す人が多いように見受けられる。 また、そういう自信がなければ、できない仕事かもしれない。 ベトナムで、チョッパーを操縦していた人なんかは、自分の命を守る為に自分のパイロットとしての力量と判断が生死を分ける。旅客機のパイロットは何百人という命を預かるのだから、それなりの厳しい自分の考えがあるだろう。パイロット=人を見下す、というステレオタイプ化はするつもりはない。 旦那は、大昔、海軍であったが、パイロットあがりではない。 もともと、首都ワシントンのその組織の本部で、海外の政治的な仕事をしていた。 マイアミに希望して転勤したが、その後、いろいろあって、キャリアチェンジをしたのである。 なので、そういったパイロット気質というものを持ち合わせていないのかもしれない。

うちの旦那は、その賄賂と指導という点で、同僚二人が一線を越えてしまったのを目撃してしまった。 ひとりは、無料の航空券とリゾートの無料滞在のチケットを旦那の目の前で受け取った。 もう一人は、現地の人たちに対して高慢で異常な態度をとり、普段は旦那を敵視していた。 あとで別の人から聞いたはなしでは、別の国で、その人物があまりにもひどい発言をしたため、現地の担当者は後ほど、ストレスから心臓発作で亡くなってしまったそうだ。

しかし、だんなは上司にはちくらなかった。 反対にその二人からじわじわと攻撃を受けることになった。 その二人は上司のバディーとなり、いつもその上司にまとわりついて、陰で旦那を陥れるようなことをしていたのである。 その上司も上司で、二人の意見だけを信じていた。 物事には必ず2つ以上の面がある。 その一方だけを頭から信じる、というマネジャーとしての能力に欠ける人であった。 ちなみに、そのマネージャーは元カリフォルニアのハイウエイパトロールであった。 うちの教会の英語牧師に似ている。 ぽちゃっとしていて、ジャックダニエルが好き。 同じコンドにいたから、たまに遊びにいって、一緒に飲んでいた。 飲み友達としては、最高なんだが、マネジメントとなると、評価は別となる。 人格と仕事の肩書きと能力はまったく別である。 一緒にする気はそうそうないので、旦那が上司とうまくいっていない間でも、私はそのマネジャーと飲んだり、その奥さんとマージャンしたりと、良い関係は保っていた。

まあ、マネジャーはマネジャーで、よりどりみどりであるが、残念ながら、「権限」というものを有する。 さらに、海外の事務所はマネジャーの権限がアメリカ本土の事務所より、大きい。 検査官の任期は2年ごと。 最長で6年から8年いられる。 任期更新、アメリカ本土の帰任先については、マネジャーが采配をふるう。 似たような経験を味わったかたは、読んでいる方の中にもいるだろう。  

(つづく)

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