No. 33 神の名の元に出来た国
小泉純一郎首相がアメリカへ最後の訪問となった。 昨日は、仲の良いBush大統領に招待されて、エルビス・プレスリーの住んでいた家、Grace Landという博物館へ行った。 かなり、特別な計らいであった。 アメリカのメディアの間でも、前評判高く、到着の前からニュースになっていた。 小泉の純ちゃん、プレスリーのフアンということで、さぞかし喜んだらしく、さっそく、ぎらぎらのプレスリーのめがねをかけて、プレスリーの歌を次から次へと披露した。 振りも付いていた。 そこんとこが何回もニュースで流れた。 CNNなぞ、かなりの時間を割いて放映していた。
日本はイラク戦争を支援した。 なので、Bush大統領は、純ちゃんのことを、”Buddy(相棒)だよ”と言っていた。 W.Bush政権の前の、Clinton政権、お父さんBushの政権の時は、国内の問題がでると、日本をたたいて(Japan Bashing) 円為替のこと、日本からの輸出のItemのことなど、貿易関係のことで、日本にプレッシャーをかけてきたアメリカである。 息子のW.Bush政権になってからは、狂牛病のことでの米国産牛肉の輸入制限のちょっとしたことがあったくらいで、日米はまあまあな関係を保ってきたと思う。 日本と中国の関係が少し悪化してきていたから、日本としては、やはりアメリカ寄りでないと、だめなんだろうな。
以前、小泉純ちゃんは、社会党元代表の菅氏から、「アメリカがイラクに侵攻した理由の大量破壊兵器がみつかんねーじゃんかよ~、見つからなかったら、どうすんだよ~。」と国会でこづかれていた。 でも、純ちゃん、「兵器は必ず、見つかるであろう。」と言い切っていた。 あれから、2年は経ったけどね。 そこまでして、アメリカ寄りの政権であった。 これも、9月で変わるけど、日本は誰が首相になっても、アメリカのような急激な変化はない。 でも、この小泉首相ってのは、私の感想では、「言っていることが理解できる喋り方をする首相」であった。 それまでは、「あ~う~」っていう首相もいたし、アル中の首相もいた。 蜃気楼のようにあっというまに消えた首相もいたけど。 純ちゃんは、アメリカに来ても、一応、英語を喋ることの出来る首相であった。 日本が、第三世界だと思っているパキスタンのムシャラフ首相(大統領?)は、英語とってもうまいよ。 日本も次に首相になる人は英語ぐらいなんとか出来たほうがいいと思う。
また、この純ちゃん政権中、よくやったなぁと思うのは、北朝鮮に拉致された人たちを日本に連れ戻したということ。 それまでの首相は出来なかった、というかしなかったよね。 アメリカにうしろに構えてもらって援護射撃がいつでもできるような体制であったのかもしれないけど。 拉致被害者を自ら北朝鮮に赴いて、連れ戻してきてくれた、このことは、大いに評価していいんじゃないかなぁ。 ところで、この純ちゃん、首相辞めたら、嫁さんでもさがすのかね。
さて、アメリカ寄り、と先に書いたけど、ちょっと前の私だったら、難色を示したであろう。 だって、イラクへの侵攻って、どう見てもやりすぎだと思っていたし、それに対して、日本が援助したら、もうテロの対象だっていうのに・・・・。 でも、このごろ、日本はアメリカ寄りでもいいんじゃないか、と思う。 イラク侵攻のことや、今のBush政権の後ろにいるキリスト教原理派(Fundamentalist)のことは、近視眼的なことなので一応、棚に上げての話だけど。 何故かって? だって、アメリカって、天のお父さんの名の元に建国された国家だから。
Pilgrim Fathersという清教徒の一派がイギリス国教会から逃れて、May Flower号という船で、うじの湧いた水を手ですくって飲みながら、命からがら、マサチューセッツ州のPremouthとう所についた・・・、というのは、中学の歴史で習うところだよね。 でも、May Flower号に乗っていたのは、清教徒という「清い」人間だけではなかったらしい。 売春婦、犯罪人ものっていたということである。 Miersとかいう人が書いている。 Bay of Pigという、1984年あたりに、Cubaから自由を求めてくるキューバ人が船でマイアミなどの南フロリダへ、押し寄せた事件があった。 カストロは、牢屋を開けて、売春婦、犯罪人もみんな船に乗せて、アメリカに送ってきた。 事実、この時期からマイアミの治安が悪くなり、マイアミのあるDade County(郡)からは、白人のアメリカ人が北のBroward郡やWest Palm Beach郡に引っ越してしまった。 私たち家族は7年間、Broward郡に住んでいたから、身にしみてよくわかる。 話は戻るが、May Flower号には、奇麗事ばかりが乗っていた、というわけではなかった。
それでも、このアメリカって国は、経済的、文化的に20世紀の覇権(”はけん”:Hegemon)となったわけである。 しかし、80年代にアメリカは落ち込んだ。 双子の赤字、相次ぐ首切り、インフレによる低所得者や年金生活者へのしわ寄せ、ホームレスの増加。 バブルで浮かれてた80年代の日本は、「もはや、アメリカに学ぶことはない。」と豪語していた。 しかし、90年代に入って、日本のバブルがはじけ、失われた10年に突入。 一方、アメリカは93年あたりに不況を脱して、なんとStanford大学が震源地となって、シリコンバレーや東海岸の一部が中心となって、ドット・コム バブルになり、株ブーム。 また、それ以前に首切りになった人たちが自分で小さい事業を起こし、Small Businessブームも起こした。 それで、アメリカはまた、日本を大きく引き離してしまった。 不死鳥のようであった。 冷静にみれば、ブームはあったけど、一般人の給料は実は、あまり伸びていない。 でも、テクノロジーの会社の社員で、Stock Option(社員福利厚生の一つ。 自社株を無料か安価で買う。 株が上がり、ある金額になったら売ってもいいよ、というもの。 社員の業績が会社の株価に反映されるから、労働意欲をあげるという意味もある。)をもらった人たちは、軒並み億万長者になった人たちも少なくない。
アメリカという国は、やはり魅力的な国であろう。 世界中の若者がこの国の永住権を取りたいと望む。 中国、インド、その他の国の優秀な人間たちは、日本、シンガポール、カナダ、イギリスではなく、アメリカに行きたい。 私自身も、日本の大学には戻らず、アメリカの大学への留学を選んだ一人である。 実際にきてみて、最初は大変で、苦しかったけれども、結果的に、これだけ私にチャンスを平等に与えてくれた国である。 感謝をしている。 日本のように、平均して優秀な人たちが沢山いる国とはちがい、この国は玉石混合で、トップの2割の力のある人間があとの8割をコントロールしているともいえるかもしれない。 しかし、8割の人たちの権利もしっかりと法の上で守られている。 アメリカかぶれ、といわれる人もいるであろう。 そう思われる方たちも、心の中では、アメリカという国にたいして、一目置いているのではないかな。
なんで、こんなことを思うようになったか、というと、一ヶ月前ほど、Pledge of AllegianeとOath of citizenship を読む機会があったからである。 Pledge of Allegianeは「忠誠の宣誓」とでもいうのかな? 子供たちの小学校の教室で、毎朝、アメリカ国旗に向かって、右手を心臓の上において、誓いを立てる。 Oath of citizenshipは、「アメリカ市民の誓い」とでも言うのだろう。
では、以下に記す。
Pledge of Allegiane
I pledge allegiance to the flag of the United States of America,
and to The Republic for which it stands,
one Nation under God, indivisible,
with liberty and justice for all.
忠誠の誓い (あかしや訳)
アメリカ合衆国の旗とその国に私は忠誠を誓います。
神の元に一つの国民となり、分かつことなく。
国民全員のための自由と正義とともに。
Oath of citizenship
I hereby declare, on oath, that I absolutely and entirely renounce
and abjure all allegiance and fidelity to any foreign prince, potentate, state, or sovereignty of whom or which I have heretofore been a subject or citizen; that I will support and defend the Constitution and laws of the United States of America against all enemies, foreign and domestic; that I will bear true faith and allegiance to the same; that I will bear arms on behalf of the United States when required by law; that I will perform noncombatant service in the armed forces of the United States when required by the law; that I will perform work of national importance under civilian direction when required by the law;
and that I take this obligation freely without any mental reservation or purpose of evasion; so help me God.
(アメリカ)市民の誓い (あかしや訳)
私はこれまでに市民であり、従ってきたアメリカ合衆国以外の国家、君主、王への忠誠をすべて放棄することを誓います。 私は国内外の敵に対して、アメリカ合衆国憲法とその法律を遵守することを誓います。 そして、アメリカ合衆国への忠誠と信念を持ちます。 法律により要請されるのであれば、アメリカ合衆国の為に武器を手にします。(戦場に赴きます、という意味か) 法律により要請されるのであれば、アメリカ合衆国軍下の武装しない任務をも遂行します。 法律により要請されるのであれば、文官の指揮下において、国家の重大事の任務も務めます。 然るに、私は、上記の義務をそのままに受け入れます。 義務の回避という裏心はありません。 ですから、主よ、私を助けてください。
この二つの誓いは、今の日本人にとっては、異質に感じるであろう。 でも、戦前、戦時中は日本人だって、「大日本帝国」の為に死にます、なんて誓わされていたんだから、明治、大正、昭和一桁生まれの人には、なんとなく、ああ、あんな感じかぁ、ってわかるのかもしれない。
上記の黄色の文字を見てくださいよ。 ”Under God" と"so help me God" と神様の名が出てくるのである。 アメリカのコインをみると、”In God, We Trust"と必ず刻印されている。 アメリカ憲法はまだ詳しく読んでいないけど、きっと”God"の文字が入っているに違いない。
アメリカは完璧な国ではない。 日本のほうが良い点も沢山ある。 しかし、これだけの大国で、国民や移民、在留異邦人にも広く平等にチャンスが与えられているこのような国はほかにあるであろうか。 また、努力とチャンス次第で、無一文から億万長者になる人も沢山いる国である。 南フロリダのターンパイクでFlorida Keyに行くとき、途中で"Manuel Diaz”と書いた大きな看板が立っている大きなNursery(植木屋:といっても、どでかいパームツリーを栽培している)の所有地が延々と続くところがある。 Manuel DiazはCubaから流れてきた人で、無一文でアメリカの国土に裸足立った人間である。 あれだけの土地に何千本というパームツリーが並んでいる。 彼は億万長者であろう。
いったい、なんで、この国が人々の羨望を期待を集めた超大国になったのか? 第二次大戦で焦土化しておらず、他の国が戦後の復興に時間がかっているうちに、甘い汁を吸った、という考えもある。 私も政治学的にはそう思う。 しかし、それだけではなく、”In God" ”Help Me God" ”In God We Trust"というフレーズにもその理由が見えるような気がするのである。 あなたはどう思う?
あかしや
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