No. 75  固定観念

今朝4時に、老犬に起こされた。 ベッドのわきにきて、「う゛ー」と言われた。 人間の言葉に翻訳すると、「はよう、起きて、あたしを外に連れていかんかい! もれてしまうで!」である。 夢遊病者のように起きて、犬を外に出して、「わん!」と呼ばれるまで、居間のソファーに寝ていた。 自分のベッドに戻ってからは、私のこと、すぐに眠りについた。

旦那はそうじゃなかった。 その時から起きてしまい、家の仕事を始めた。 土曜日の今日の私たちの仕事は、詰まっている乾燥機のダクトを掃除して、空気の流れをよくすること、と、車のメンテであった。 そのダクト掃除には、先日Lint Eaterという道具をネットで買った。 煙突掃除用の細長いワイヤの先にブラシやら、小さなつかみ手のようなものを装置して、ダクトの中を這わせる。 

私が起きたころには、旦那は朝食を外ですませ、必要な道具をHome Deptというところで買ってきていた。 屋根裏の板を削る電気のこぎりの音がまもなく聞こえてきた。 うちのばか犬は、何事か?といぶかしげであった。 昔のビクターのマスコットであった、ダルマシアン犬が蓄音機のラッパ型のスピーカーに耳を寄せて首をかしげている、まさにそんな感じで。

下から掃除道具を入れたが、途中、ひっかかったらしく、屋根裏にあがって、上からも詰まったリント(Lint:衣類からでる繊維のごみ)をとろう、という魂胆であった。 ダクトは、地上階から屋根裏に登って、外に熱い空気が排出される用に這わせてある。 日中は40度ちかくなるダラスの夏。 さらに、屋根裏部屋はもっと気温が高い。 その中で、旦那は一生懸命働いてくれた。

途中、旦那が屋根裏からおりてきて、「面白いダクトシステムで、つっかかったのは、なんとFanが途中に入れてある。 おもしろいシステムだね。」といっていた。 私も、「うん。よく出来たシステムだね。」と答えた。

午後は、車のメンテ。 3月のInspection(年次車検というのか)の時、メカニックがパワステ用のオイルというか潤滑油が汚いので、交換しなきゃだめ。 エア・フィルターも汚い、と見せてくれた。それぞれ、$20と$70かかると言う。 うーん。 それは、ちょっと高い。 自分で変えられるからいいや、と断った。 それを旦那と一緒にやろうとしたら、午後、あっという間に旦那がすべてやってくれた。 部品、それぞれ、$3と$13。 女性だからと甘くみて、そのメカニックは吹っかけてきたんだろう。 または、その自動車修理場は車検の際に、敢えて、そういったところを見つけて、女性だとその場で修理するように仕向けている。 こちとら、多少の車の故障は現象とか、匂いとかで、大体わかるんで、「甘くみるなよ~。」といいたい。


さて、くそ暑い中、今日やるべきことが終わったので、洗濯をして、乾燥機を使った。 暫くして、洗濯物が乾いているかどうかチェックしたら・・・・・乾いていなかった。 つまりダクトの詰まりは解消されていなかったのである。

旦那の作業中、乾燥機のところから、天上を見ていた。 ごりごり、こすっている音が、何故か換気扇のところから聞こえたなあ。 ん?とは思ったが、そのまんまにしておいた。 そして、再度天上をみると、換気扇自体が少し下方に外れていたなあ。 でも、あとで直すか、とそのまんまにしておいた。

洗濯物が乾いていないことを旦那に告げたあと、「ちょっと気になったんだけど・・・」と換気扇のことを話した。 夕食直前だったが、旦那はまた屋根裏に上っていった。 そして、降りてきて、言う。「やっと問題がわかった。」と。 乾燥機からのダクトではなく、換気扇からのダクトをを間違えて掃除していた、ということだった。

「だから、屋根裏側からみたダクトはきれいだったんだ。 乾燥機からのダクトは、一メーター先にあって、断熱材の中に埋もれて、隠れていた。 今年の初め、屋根裏に上がったとき、その存在に気づかずに、その横にある(換気扇からの)ダクトが乾燥機からのダクトとばかり思いこんでいたんだ。 まったく疑わなかった。 僕の固定観念だったんだ。」


つまり、最初にこうだ、と思っていた物が間違いであるのに気がつかず、それをずっと信じて、作業した結果、間違いだということに気がついたのである。



今、「How doctors think」というJerome Groopmanという医者が書いた本を読んでいる。 5月ごろ出版された本である。 


内容は、医者が診断を下すまでの思考のことについてかかれていて、いかに誤診に至るのかということを述べてある。 まだ2章を読んでいる最中であるが、かなり面白い。 

医者は、人間だから、患者によっては友達になってしまう。 気に入った患者だから、つらい検査はさせたくないという気持ちが動いて、必要であった検査をはしょってしまい、誤診に至る事がある、という。 もっともだと思う。 また、インターンにありがちなのは、患者の第一印象であまりかかわりたくないなぁ、と思うと、紋切り型の診断をしてしまいがちで、これが誤診につながる、ということである。

実例として、ヨッパライ老人が救急車で運ばれてきた。 肝臓がおかしい。 担当た研修医は、酒の飲みすぎからくる、肝臓疾患、とあまり検査をせずに、診断を下した。 研修医を面倒見ていた指導医師は、別の疾患の可能性もあるので、これとこれとこれの検査をしなさい、と指示した。 結果は、特別疾患のWilsonなんとかという重金属が体に溜まってしまう病気だった。 検査を指示しなかったら、発見されなかったのである。 この老人は、食後に一杯だけのラム酒をたしなむだけで、アル中ではなかった。 救急に運ばれたときは、その一杯を飲んだあとのことだけであった。 研修医の固定観念があやうく誤診につながるところであった。

そのほか、誤診に至った理由が医者の思考による例が延々と書かれている。 とても、興味深く毎晩ベッドで読んでいる。 ご興味のあるかたは、文末にAmazonのPageのURLを貼ってあるので、どうぞ。


今日の私たち夫婦の乾燥機のダクトの失敗も「固定観念」によるものであった。 旦那は、換気扇へのダクトが乾燥機へのダクトだと一年近く思い込んできた。 固定観念である。 私は、何で換気扇が動くのか?なんで換気扇のところから掃除している音が聞こえてくるのか、と少々疑問に思ったが、まあ、旦那がやっているんだろう、と気にしなかった。 旦那は正しいダクトを掃除しているんだ、という固定観念。 私が、「ねえ、ちょっとこれ、ちがうのかもよー。」と一言言えば、旦那は、50度近くに気温が上がっている屋根裏部屋で、時間を無駄に過ごすこともなかったのである。



日本でもアメリカでも、クリスチャンに対する固定観念はある。 また、クリスチャンであっても、同じクリスチャンの人への固定観念、牧師や、神父に対する固定観念はある。

「XXXXするのは、クリスチャンとして好ましいことではない。」

「クリスチャンなのに、あの人たちは離婚した。」

「あの夫婦はクリスチャンなのに、仲が悪い。 これって、おかしいんじゃないの? クリスチャンだから、夫婦仲は良いはずなのに。」

「クリスチャンなのに、悪いことをしている。」

「あの人は、牧師だから、言うことはすべて正しい。」

「神父は結婚しないから清い。」

「本屋で態度が悪いのは、決まって、クリスチャンの女性。」(本屋で仕事をしていた人から聞いた。)

「こういうことは、クリスチャンとして、していいのか?」

「クリスチャンなのに、大金持ちだ。 いいのか。 クリスチャンは清く、美しく、貧しいんじゃないか?」

「あの人は、クリスチャンだから、この仕事はタダでやってくれるに違いない。」

「あの人は、クリスチャンだから、絶対に嘘つかないだろう。」

「これは、クリスチャンビジネスだから、安くて、確実で、内容も良いに違いない。」

「こういうこと、しちゃったけど、あの人、クリスチャンだから、赦してくれる。 だから、いいやー、謝んなくても。」

「私はクリスチャンだから、天国に行かれる。 でも、あの人は、洗礼を受けていないから、地獄いきだわ。 よかった、私は地獄にいかないもの。」


上記、すーーーーべて、固定観念だと私は思う。 むしろ、反対の状態であることが、現実に沿っていると思う。 

クリスチャンでも、そうでない人にとっても、上記のような固定観念が、間違った判断 ー 医者の世界でいえば誤診 ー を引き起こすことが現実には多いのではないかと思うのである。 そして、特に日本においては、そういった固定観念がイエス兄さん・天のお父さんからの大きな恵みを受ける妨げになっているのではないか、と思う。


最後の例の天国地獄であるが、私自身が天国に行かれる確信はまったくない。 この地で、結構悪いことしてきたから。 それが、すべてつぐなえるとは思っていない。 
聖書には、

「心で(イエスを)信じ、口で(イエスを信じると)告白して、救われる。」とある。 

それは真理である。 ただ、天国、地獄行きを決めるのは、神さんである。 人間の行いや、判断ではない。 また、一回信じたからといって、そのあと、信じることがあやふやになったら、やばい、と思う。 母がそうだった。 だから、私が主に強引に釣り上げられて、母を天国に行かせるためにこき使われたのである。

一回信じたから、それで結果オーライとは言えないと、私は思っている。 信仰は結構たいへんだわ。


さて、旦那は、また今日の時間を無駄にしたということと、乾燥機がまだ使えないということで、「ごめん」だって。 可哀想なので、今日は特別にマッサージをしてあげた。 首と肩が痛いんだって。 もう、9時過ぎだから、コンピューターはこれでおしまい。 旦那、お疲れ様。 ありがとうね。


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「How doctors think」 Jerome Groopman
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