No. 110  祈りが聞かれた驚いた

土方に明け暮れた夏であったが、今は、きゅうりとオクラを毎日収穫し、成果を楽しんでいるこの頃。 シランチョ(コリアンダー)もベージル(バジル、バジリコ)も生えているので、料理のときは、庭に出て摘んでくる、という便利さを楽しんでいる。

ハリケーン グスタボとアイクの余波で、ここダラス近郊も風が強くなり、雨が降ったので、土方は中止。 ぶどう園にする場所の整地、オーガニックコンポスト建造、木の移し変え、砂利をひいた家の横の通り道、などのプロジェクトが一時ホールドになった・・・・という合間に、Taxのクラスの数々が始まり、代理教員の仕事も入ってきてしまった。 なので、またまた、私らしく、いろいろな土方プロジェクトが中途半端なまんまである。


さて、そんな中、出張が一段落して、家にいた旦那に突然お呼びがかかった。 先週の中旬ごろか、エルパソの東南にある、Big Bendという国立公園のそばで、メキシコとアメリカの国境付近で、セスナ機が墜落した、という連絡が入った。 

ハリケーンのもたらした雨で、メキシコ側のダムを放水したらしい。 そのため、国境を流れるリオ・グランデとその支流が氾濫した。 それを視察するため、アメリカとメキシコの役人はセスナ機をチャーターして、Rio Grande沿いの標高2000メートル以上の高度の山並みの間へ飛んでいった。 当日は、視界が悪く、飛行は薦められないという状況であったのだが。

結果として、パイロットを含む4人を乗せたセスナは、山の壁みたいなところに激突して、飛行機の前部が大破。 4人は死亡。

役人が乗っていて、それも、ホワイトハウスが任命したWater Commissionarが乗っていた、ということ、メキシコの役人が乗っていて、墜落現場がメキシコ側ということ、更に、NTSB(National Transportation Safety Board:運輸安全機構とでもいうか?)という飛行機事故調査の担当がスペイン語を話せないということで、旦那に白羽の矢がたった。 

旦那はNTSBの職員ではないが、FAA(Federal Aviation Administration:運輸省航空局みたいの)の職員である。 普段は、大型旅客機の安全性の監査などをしている。 事故の現場検証はしない。 飛行機墜落の現場検証はNTSBの仕事である。 これが、一般の個人で勝手に飛んでいたセスナであったら、旦那は行く必要がなかったのである。

連絡があったとき、オフィスに残っていたのは、旦那以外にもいたんだが、スペイン語が話せるのは、旦那しかいなかった。

ということで、久々に出張のない週を楽しんでいた旦那(と私)は、あたふたと出張の用意をして、いつでも、空港へ飛び立てるようにした。 

墜落現場は、車では行かれず、ヘリコプターでいって、登山ということになるので、山歩き用のブーツなど、野外活動用の洋服を揃えた。 さらに、万が一、飛行機の中の死体がまだあるかもしれない、ということで、白花油、つまりメンソレのようなつんとする臭いのある油を持っていった。 死体があるということは、当然、ものすごい腐敗臭があるからである。 白花油を鼻の下に塗れば、腐敗臭のカモフラージュができるということだ。

旦那は、木曜日にエルパソに飛んでいった。 そこで、いろいろなアレンジをして、日曜日にヘリコプターで現場に向かう、という連絡をもらった。

旦那は、メキシコとのやり取り、川氾濫の避難民でごった返している現地、書類不備など、準備に大変だった様子。 でも、この日曜日、やっと現場に行く、と連絡を受けた。

なんとなく、かすかであったが、変な予感がしたので、神さんに祈った、旦那の安全を。 そして、パタリロ牧師にメールを打って、旦那の安全を一緒に祈ってもらった。



さて、日曜日、教会が終わったあとの6時過ぎ、旦那に電話した。 返事なしなので、メッセージを残した。 その後、ご近所さんのところでピザの夕飯を頂いた。 食べている間に携帯電話が鳴った。

電話にでると、Border Patrol(国境警備隊)の医者からであった。 彼は、手短に自己紹介して、旦那にスピーカーフォーンで取り次ぐという。 旦那はすぐ電話に出た。

現場検証が終わったあとの帰り道で、尾根で転んで、落ちて、かなり大きなサボテンの上に落ちてしまったそうだ。 そのとき、サボテンの大きな針が腕を貫通した、とのこと。 

あー、旦那、またやった。

でも、私はすかさず、念を押した。 破傷風の注射をこの初夏にアフリカに行く前に接種したこと、医者に抗生物質を投与してもらったかどうか、そして、指は動くか、ということを。 一通り聞いたとき、旦那は結構苦しそうだったから、会話はすぐに切れてしまった。 どちらの腕で、今、どこにいるのかを聞かなかったので、そのときは、詳しい事情はつかめなかった。

なんとなく予感がしたとういうのは、この程度でよかった、と思った。 心配していたのは、ヘリコプターに乗って、未開の奥地にいく、ということであった。 二次災害ということは、少なからずある。 ヘリコプターが落ちないように、と祈っていた。

旦那は痛いだろうけど、腕の怪我だけで済んだ事を神さんに感謝したのである。 神さんは、旦那を守ってくれた。


旦那が帰ってきてから、話してくれたが、事はもっと大掛かりだったらしい。 山からヘリコプターで下りてきたら、救急隊員が待機していて、応急手当をして、別のヘリコプターである町に搬送されて、そこでまたヘリコプターに乗り換えて、オデッサという町の病院にいったそうだ。 サボテンの長い針を痛い思いしして抜いてもらうのに、前後5時間の時間がたった。 モルヒネ投与してもらっても、ものすごく痛かったそうだ。 ベッドのシーツを口に突っ込んでこらえたらしい。 その後に、また飛行機でアルパインという基地にしていたホテルに戻ってきたそうだ。 ボーダーパトロールが活躍してくれたらしい。

詳しい話は、事故の事、ボーダーパトロールのこと、Department of Public Safetyというあまり知らなかったAgencyのパイロットのこと、旦那がボーダーパトロールとメキシコとの橋渡しに貢献したこと、などを含めて、別途Blogに書くので、ここでは割愛する。

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祈りが聞かれたのは、旦那の安全の祈りだけだはなかった。 本題はこれからだ。

今日、旦那が仕事から戻ってきたときは、私は、夜のTaxのクラスに向かう直前に、カレーライスを食べながら、子供たちの日本語の宿題を見ていた。 

当然、忙しい。 しかし、旦那は何か話したいらしい。 なので、聞くことにした。

そうしたら、なんと、なんと、旦那の上司が別の部署に移る、という考えられないことを言う。



旦那の上司は、私より年下で、元、米軍のパイロット。 プエルトリコ出身。 以前は、同僚であったが、前のマネジャーが退職したので、何故か彼がマネジャーになった。 彼の奥さんと子供たちを私は知っている。 職場では、家族ぐるみで集まることも多かった。


2年ほど前から、旦那はちょぼちょぼとこのマネジャーのことを私に話すようになった。 旦那が、この職場ではあまり長く続かないかもしれない、といい始めた。 旦那は、退職を考え始めた。 それは、実は、このマネジャーが原因である。

彼は、Micro Managementといって、細かいところまで、ちくちく詮索するらしい。 理由は、自分の保身のため。 公的機関に勤めている人間の目的は、自分のポジションを守ること。 民間の利益を守ることや、組織の効率、強いては、税金を節約する、ことは、自分の保身の次に位置する。 これを政治科学用語で、"Theory of Bureaucracy"という。

結果として、出張費のチェックから始まり、ひどい時間に出張から帰らせるなど、しわ寄せが職員に行く。 

更には、マネジャーの奥さんの教会の友人を良い待遇で職場の庶務みたいなポジションに引き入れた。 なんと、週休3日の待遇。 しかし、実力が無い人で、職場に大きなダメージを与えた。 それでも、彼は、その人を最後まで擁護した。 しかし、職場の全員がダメージを被ったので、その人は別の部署の女性と交代することになった。 縁故採用がいかに職場に悪影響を及ぼすかという典型的な例であった。(アメリカの大手の会社の多くが、こういった縁故採用を制限している。)


旦那は、正義感がかなりあって、普通の公務員とは違う意識の持ち主なので、こういったマネジャーは耐えられないらしい。 でも、旦那側にも、多少の落ち度はあるかもしれないので、私は、"You may have to play the game."(これはゲームなのだから、ゲームのなかでうまく立ち回ったほうが良い。)とは言った。 彼はそれができない人だけど。 なので、私に出来ることといえば、朝食とお弁当をしっかり作って持たせることと、話の聞き手になることであった。


同時に、旦那の退職に向けて、私自身も仕事を探して行こうと決めた。 あれこれ面接したり、仕事を探したりした。 子供がまだ小さいので、なかなか時間的に条件の合う仕事は見つからない。 教員免許を取るために大学に戻ることも考えていた。 常に、多少の焦りとプレッシャーが私の心に浮遊することになったのである。

ストレスによる旦那の体への影響が心配であったし、次に職場を見つけるにも、同じFAAであっても、ランクを下げて、給料カットを覚悟しない限り、なかなか次のポジションはなかった。


なので、私は、そのマネジャーが他の部署に異動してくれるように神さんに祈った。 この春ごろだったと思う。

しかし、家族がいる人である。 クビにしてくれ、という祈りはしてはいけない、と思った。 同時に、旦那にも落ち度があるかもしれないので、それを神さんに許してもらうことを祈った。 その上で、その上司が給料カットなどの憂き目に遭わず、旦那の職場から移って欲しいと。

しかし、現実は、上司は、スペイン語と英語のバイリンガルであるので、旦那のいる国際部門に居て当然。 異動なんて、普通ではありえないのである。

でも、旦那を助けたくて、祈った。 教会でパタリロ牧師に祈ってもらった。 旦那はこの事を知らない。


最近は、そう祈ったことも忘れてしまっていた。 


しかし、そのマネジャーが職場から居なくなる、と今日旦那が言うではないか!普通だったら考えられない異動である。 


祈りがき・か・れ・た・・・・・。


マネジャーの異動先は、国際部門ではなく、なんと、数ヶ月前にFAAとの癒着問題があって、検査すべきことをしていなかったというスキャンダルがあった航空会社を監査する部門。 旦那は、「あの部門は、問題がとても多く、絶対に行きたくない部門だ。」と言っていた。

新しい上司は?と聞くと、とりあえず、今のSupervisorがするらしい。 その人は、元海兵隊でメキシカンアメリカン。 旦那の仕事をよくフォローしてくれた人であるし、上司のことで旦那がものすごく落ち込んでいるときに、私に直接あって、どうしたのか、と聞いてくれた人であった。 家にも良く電話してくれて、私とは、半分冗談で、スペイン語で話してくれる。 旦那が負傷した、という連絡も彼が私にしてくれた。 この人が上司になるのなら、旦那の職場は安泰になる。 ほとんどの人が、マネジャーのやり方に不満を持っていて、モラルが下がっていた。 なので、この人がマネジャーになってくれれば、職場の雰囲気と士気が上がると思う。

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祈りが聞かれるときは、いつも、唐突である。 なので、すぐに実感がわいてこない。 

すんなりと祈りが聞かれたこと事態が信じられない、というか、畏怖の念のほうが大きい。


やはり、教会に行ったら、そのまま帰ってくるのではなく、一人残って祈ること、そして、牧師先生に祈ってもらうこと、って重要なことだと思う。 私は教会は友達をつくるところ、気に入った人たちとおしゃべりをするところとは思っていない。 神さんを賛美し、言葉を受ける場だけではない。 一週間の間、足りなかった祈りを補充する場所でもある。 遠慮せずに、どんどん前に出て、牧師先生に祈ってもらおうではないか。

神さんに、どんどん祈って、大いなる期待をして良いのだ、と確信する。 今、祈り続けているとんでもない事がある。 まさに人智をはるかに超えたことである。 でも、祈り続けよう。 祈りは聞かれるからである。


旦那と話をしたあと、Taxのクラスに向かうべく、旦那のオンボロ車に乗った。 日が落ち始めたある秋の今日の夕方であった。

車のハンドルを握りながら、大声で叫んだ。

「主よ!主よ! 祈りを聞いてくれて、ありがとうございます!」

何度も、何度もお礼を言った。


対向車線のドライバーは、「なんだ、あのアホ女? 口をパクパクさせて運転しているぞ。」と思ったかもしれない。


あかしや番頭

ps。 パタリロ先生、お祈り、ありがとうございました。

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