No. 218 天国は退屈なところか



 ちょっと野外でテント張って寝た。

春だし、仕事で息抜きがしたいってことで。



だあれもいないキャンプ場。

鳥の鳴き声と、遠くの農場(らしい)からコケコッコーと聞こえる。

空には、ボールドイーグルのつがいが、舞っている。


前の晩は、寒くてよく寝れなかった。

寝袋に潜り込まなかったため。

もう一つの理由は、外で大きな動物が動き回ったり、テントの外側をひっかいたり、とうるさかった。


テントの横をがさごそと大型の生き物が歩いている音がした。

結構、近くにいる。

果敢にも人を恐れないようだ。

じゃあ、人?? 

自然の中で出くわすと一番こわいのは、人間なので。


サーチライトで外を見ても、姿は映らず。

しかし、うちの犬は耳をぴんと立てて、音のする方向をじっと見据えている。

そうしているうちに、キャンプファイアのピットの向こう側に、ライトに照らし出された大きな動物を見た。

え!! マウンテンライオン? リンクス? ボブキャット?!


光る眼で、こちらを見据えて、今もとびかかろうとしている格好であった。

うげー!!

っと、旦那をたたき起こして、もう一回ライトで照らしてみると。。。


それは、どでかい”アライグマ’であった。30-40キロはありそうな大型。

ぜんぜん可愛くない。


テントの横で聞こえた音は、人間の足音にも聞こえたことに、なっとく。

あの大きさでは、当然だろう。


翌朝、起きたのは9時過ぎ。

旦那はすでにキャンプ場の横を流れる川に釣りにいっていた。





あたしと愛犬は、うろうろ散歩して、キャンプ場と集会に使われる建物のそばにいったり、敷地全体をみてまわった。

そして、キャンプの横にもどってきた。


あたりは、一面黄色い花が咲き、ところどころ、紫色の背が高い花が立っている。

風の音は聞こえるが、遠くから聞こえる工事の音以外は、いたって静か。

犬も私のそばで横になって静かにしている。


天にむかって、「神さん、御国っちゅうのは、こんな感じなんですか?」と尋ねる。


花が咲き、そよ風が吹いて、寒くもなく、暑くもない。

鳥は自由に舞い、遠くにいる者同士で、会話をしている。

水と食べ物はそばにある。

雨風をしのぐテントもある。

ポータブルWi-Fiもってきたので、これが書ける。

数日は仕事をあくせくせずとも、生きていかれる。


アダムとイブは、Wi-Fiは当時はなかったにせよ、裸で、寒くもなく暑くもなく、

食べ物は、木の実を食べていた、と思う。

耕すこともなかった。

喧嘩もなかっただろう。

死、もなかった。


こうやって、のんべんだらり、と生きていたのだろうか。



これって、退屈じゃね?



天国って、退屈なところなのだろうか。

聖歌隊みたいのがいて、時々、コンサートはあるんだろうか。

仲間が集まって、キャンプファイアーを囲んで、熊にあった話とか、アライグマに食べ物を盗まれて、追っかけて、こけて足を折りそうになった話とか、楽しめるところなのか?


病気とか悲しみが無いのは、確かである。


でも、それだけだと、つまんないかも。


天国には、温泉があるんだろうか?

先祖様がたくさんいて、多すぎて、誰が誰だか分んなくて、困ってしまうことってないのだろうか?

鎧を着た先祖様がきたらどうしよう。

以前飼っていたたくさんの愛犬が集まって、がうーって喧嘩しないのだろうか?


そんな疑問が出てくるこのあたしこそ、俗人である。

天国にいる人間の思いは、この世にいる人間の思うこととは、違うのだろうなぁ。


これ以上、考えると、あたまがどうかなりそうなので、いったんここで筆、ならぬ指をおくこととする。

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